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汚染水対策

汚染水対策をしている。福島第一原子力発電所関連で良く聞く言葉です。
現在も続く汚染水対策は事故によりもたらされたものです。海への環境汚染を防ぐために最重要対策の一つとして様々な取組がされています。

では何をどう防ぐための対策なのか。それを解説していきます。

大きく分けて2つになります。一つは「海を汚さないための対策」、もう一つは「汚染水を増やさないための対策」です。

・海を汚さないための対策
福島第一原子力事故でなぜ福島の海が汚染したのか。そのメカニズムを抑えることで、対策が有効なものであるかどうかが見えてきます。

福島沖の海をどう汚してきたのか。ここも2つに分かれます。一つは原子炉を冷やした水が汚染水となり海へ流れ出たこと、そして水素爆発によって降り積もった放射線を出す物質が地下にしみ込み、地下水を汚し、汚れた地下水が海へ流れ出たこと2つになります。

対策が複数存在しますので、ゆっくりと一つずつ追っていきましょう。

(1)なぜ原子炉を冷やした水が汚染水に変わり海へ流れでたのか。

「はじめに」でお届けしましたが、原子力発電所は海水を発電するうえで必要とします。

発電時に使用する海水は、取水口と呼ばれる場所から海水を取り込み、そして放水口という場所から放出していました。つまり海と繋がっている経路があった分けです。
その経路を海水配管トレンチと呼びます。

通常の状態では、海に汚れた水は流れない構造になっています

大切なポイントはこれが水素爆発、核燃料の溶融、地震の影響により崩れたことです。崩れたことで汚染水が海へ流れ出るようになりました。

経路が複雑ですので一つずつ説明していきます。
a.原子炉圧力容器外へ
溶けた核燃料は原子炉の底に穴を空けました。燃料を冷やすために入れた水は溶け落ちた燃料に触れ「高濃度汚染水」に変わります。その高濃度汚染水は原子炉の底から抜けてしまいます。

b・原子炉格納容器を通り圧力制御室へ、そしてそこから原子炉建屋地下へ
原子炉圧力容器から抜け落ちた水は格納容器に流れていきます。この水はベント管(格納容器と圧力抑制室を繋ぐ菅)を通り、圧力抑制室へと流れていきます。現在分かっていることで、このベント管あたりにヒビから更に外へと流れでます。

c.原子炉建屋からタービン建屋へ
圧力抑制室からこぼれ出た水が行き着くところは原子炉建屋の地下になります。ここで津波がキーワードになります。津波は海抜10mの高さにある原子炉建屋を襲いました。最大で約17mの津波が襲来しています。その津波は設備を壊すだけでなく、水として原子炉建屋の地下に溜まりました。
ですので零れ落ちた溶け落ちた燃料に触れた水は、この大量に溜まった建屋の地下の海水と混じります。そして原子炉建屋とタービン建屋は配管やケーブルを通すために作られた大小様々の貫通孔で繋がっています。そこを伝って、タービン建屋の地下へと流れていきます。

d.タービン建屋から海水配管トレンチへ
タービン建屋には、原子炉で作られた蒸気を水に戻す復水器という設備があります。その復水器の中には海水の入った配管(海水配管)が通っています、その海水配管は海水配管トレンチを通り、海側設備まで通っています。
タービン建屋の地下からあふれ出た水は、海水配管トレンチへと流れていきます。

e.海水配管トレンチから海へ
海水配管トレンチは海側設備と繋がっています。そのトレンチ内に流れた水は海へと流れていきます。

これが、原子炉建屋内で生まれる汚染水が海へ流れていく経路になります。

ここで汚染水が海を汚さないために必要な対策はなんでしょうか。汚染水が生まれる根本原因を絶たなくてはいけません、根本原因は溶け落ちた燃料ですからそれを取り出すことが出来れば、海を汚す水は生まれないことになります。ですが、ご存知の通り溶け落ちた燃料の取り出しはまだまだ先のことです。
そこで、次に出来ることとして始まったのが、「塞ぐ」という対策になります。

実際に塞ぐ為に行われたのが、海水配管トレンチの閉塞取水口・放水口の埋め立てです。

1.溶け落ちた燃料で汚れた冷却水を海へ流さない対策

・海水配管トレンチの閉塞
海水配管トレンチはとても大きな地下空間になっています。その中に大量の汚染水が溜まった状態でした。東京電力が公開している動画を見て頂くと、その作業の様子が伺えます。トレンチ内の汚染水を抜き取り、それと同時に水の中でも固まるコンクリートをゆっくりと充填していきます。
現在、海水配管トレンチは全て封鎖された状態になっています。

どの様な作業がされてきたのかは、こちらの東京電力ホールディングスの動画「2014/12/26 汚染水への取り組み~汚染源を取り除く」から知ることが出来ます。

・取水口・放水口の埋め立て
事故の前(運転中)に海水を取組んでいた場所を取水口、海水を放出して場所を放水口と言います。その場所は現在埋め立て工事が行われ、封鎖された状態になっています。

この対策により、溶け落ちた燃料を冷やすことで発生する汚染水が海へ流れ出る経路は絶たれています。もう安心だと思うと、そうでもありません。もう一つ水素爆発で降り積もった放射性物質が地下にしみ込み、地下水を汚し、汚れた地下水が海へ流れでないための対策が必要となってきます。

2.汚れる地下水を海へ流さない対策
1,3,4号機の原子炉建屋の水素爆発により降り落ちた放射性物質が一番多くあるのは、1~4号機周りになります。仮のこのエリアを汚染エリアと呼ぶとします。そのエリアに来た地下水が汚れ海へ流れることを防ぐための対策が必要になります。

海側遮水壁
取水口を埋め立てた港湾に鋼管矢板の壁が作られました。これは汚れた地下水を堰き止めるための壁になります。2015年9月24日に完了しています。
ですが、堰き止めてた汚れた地下水を回収するという課題が残ります。その為に、回収用の井戸が海側に作られています。

・3種の井戸(地下水ドレン、ウエルポイント、サブドレン)
1から4号機周りの近傍の井戸をサブドレン、取水口を埋め立てた部分に掘られた井戸を地下水ドレン、取水口周りの掘られた井戸をウェルポイントと呼びます。
これらは海側遮水壁の西側(通称:陸側)にある設備です。それぞれ場所は違いますが、毎日地下水をくみ上げています。
これにより海側遮水壁で堰き止めた水は海へ流れ出ないよう管理されています。
ここで、大切なポイントがあります。それぞれの井戸から検出される水の汚染度は違うということです。サブドレン、地下水ドレンの濃度は低く、浄化設備で浄化され、基準の濃度以下である事が確認されてから、毎日海へ放出されています。ウェルポイントの水は、過去海へ流れた高濃度汚染水の残り水が今も検出され、浄化ラインには乗せず、汚染水が封じ込められているタービン建屋内へと引き戻されています。

・雨水対策
一つどうしても防げないモノがあります。それは発電所内に降った雨水です。この雨水は構内の側溝を通り、発電所の港湾内に放出されています。

海を汚さない対策は、この6年半で大分進んできました。こちらからは原子力発電所周りのデーターを入手することが出来ます。そのデーターは毎日福島県内のTV局でニュース時に報道がなされています。
発電所港湾の外になれば、放射性セシウムの値はND(検出限界値以下)という数値が続いています。

海を汚さない為の対策は、現状の対策で一つの節目(完了)を迎えています。根本原因である溶け落ちた燃料の取り出しが終わるのは数十年先になると予測されていますが、その間、これらの対策で海が守られていくことになります。

「汚染水を増やさないための対策」
発電所の中に沢山のタンクが並んでいる映像を見たことがある方も多いと思います。あのタンクは増え続ける汚染水を浄化し蓄え続けるために作られ続けています。

まずはどうして汚染水が増えてしまうのかを解説します。


(出典:福島第一原子力発電所視察者向け資料9月版)

1、3,4号機の原子炉建屋は水素爆発し、そして大きな地震を受けました。その結果、原子炉建屋とタービン建屋を繋ぐ「建屋間貫通部」は地下水が沁み入る状態になってしまいました。
地下水が染み入る先(建物の地下)には、溶け落ちた燃料に触れた高濃度汚染水があります。染み入った地下水は、人が近づけぬ高濃度汚染水(建屋内滞留水)となってしまう分けです。

一度高濃度汚染水になれば、それは現在では循環浄化システムの中に入り、浄化され蓄えられますが、その先に本来無くてはならない処理(減らす)が決まっていないため、入った分は浄化して蓄えるほかない状態になっています。

2017年9月現在において、浄化待ち処理水と浄化済処理水、建屋内滞留水を含めれば、100万トンを超える水が行き場を失っている状態になっています。

この様な状況の中、なるべく増やさないという対策が現在講じられています。

対策の考えは、増える根源になっている地下水の流入量をどう減らすかになります。これまでに作られた対策を時系列にそって解説していきます。


出典:東京電力ホールディングス㈱ 汚染水の主な取組

第1弾:地下水バイパス
1から4号機の原子炉建屋がある場所は海抜10m地帯になります。その西側は海抜35mの位置になります。地下水は高い場所から海へと流れていくものです。事故当初は近づくことさえ困難だった1から4号機周りに対策を打つことは困難でした。

そこで考えられたのが、1から4号機周りに地下水が辿りつく前に井戸を掘ろうというものです。その高台にある井戸を地下水バイパスと呼びます。これにより1日当たり約100トンおさえることが可能となりました。

第2段:サブドレンポンプ
これは1から4号機建屋近傍に作られた地下水をくみ上げる井戸です。地下水が建屋にかかる状態は震災前もあったことですので元々あった設備です。瓦礫の撤去が進み、建屋周辺の線量も下がってきたため、元々あったものを直したり、増やしたりしました。現在では42箇所可動しています。
建屋に面した井戸が稼働したことにより、1日あたり約150トンを減らせるようになりました。

この2つの対策前は1日当たり約400トンの地下水が毎日沁み入る状態が続いていました。現在でこそ、一番大きなタンクは約2000トン蓄えることが出来ましたが、その頃は1000トン容量のタンクを2日に1基、基礎から作り上げないといけない厳しい状態でした。
この2つの対策で計250トン減らせたことは、タンクを作り続ける毎日に余裕度が生まれました。

ですが、井戸は地下水量を減らすことは出来ても、ブロックすることが出来ません。そこで考えられたのが陸側遮水壁(通称凍土壁)対策になります。

第3弾:陸側遮水壁(通称:凍土壁)
これは高台からくる地下水を凍った土の壁で1から4号機を囲い、地下水が汚れるエリアに入らないようにし、迂回させ綺麗な地下水のまま海へ流れるようにする対策です。
福島第一原子力発電所はとても広く約350万m²もあります。1~4号機周りを囲むとなると総延長は約1500mに達します。地下水が流れる地層までは約30mまで凍った土の壁を作るのはとても大掛かりなものとなります。
1m間隔で約30mの深さまで冷却管を打ち込み、それを地上で連結させ、1500m繋げる。この工事が終わった後は、実際に冷却管に-30℃の冷媒を入れて水分を含んだ土を凍らせていくことになります。
現在は1か所を除き、全て地下まで凍ったことが確認出来ています。
この凍土壁が完成すれば、地下水が全てブロック出来るわけではありません。凍土壁と建屋の間に降った雨水はそのまま地下水に変わり、建屋の中にへと入っていきます。

第4弾:フェーシング工事(舗装工事)
こちらは凍土壁の工事と同時並行で行われてきたものです。地下水の源は何か。それは雨水です。雨水が浸透しないよう地表部分をアスファルトやモルタルで固める工事が施されました
地下水って山から来るから、発電所の中だけでいいの?という話があると思います。福島第一原子力発電所は海側にありながら、場所によっては海抜35mを超えます。写真は発電所への入口に通じる道路になります。坂を登っているのが見て取れると思います。今、1から4号機に染み入る地下水は、発電所の敷地の中に降った雨水が原因となっているからです。

増え続ける汚染水への対策は、地下水バイパス、サブドレン、凍土壁、フェーシングの4つになります。そしてそのうち凍土壁以外は完了し、凍土壁の凍結も99%が終わった状態になっています。

現在の1日当たりの地下水が染み入る量は、当初の400m³から130m³までは減ってきました。これは雨水に左右される対策達ですから、本当の効果というものは1年あたりでどれだけ減ることが出来たのかになります。

今、増やさない対策は冷静に見れば高止まりしています。0にはならず、蓄え続ける浄化済みの水を減らすことが出来なければ、溶け落ちた燃料の取り出しが終わるまでは、この増え続ける状態は続いていくことになります。

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